援交用語「JK」が中国で一般化
1990年代に突入する頃、それまで大学生がトレンドの発信源であったところが高校生にシフトしていった。 そして1990年代中盤には空前の女子校生ブームが到来。「コギャル」「アムラー」「チョベリグ」といったキーワードが一般にも認知された。
一方で彼女たちを取り巻くシモ界隈では、「ブルセラ」「援助交際」といった新たな風俗が登場。当時の法律でも限りなくブラックに近いグレーゾーンだったため、台頭し始めた出会い系掲示板などでは直接的な表現ではなく隠語が多数用いられた。言い逃れや屁理屈のための隠語であるが。実際はバレバレだ。「JK」はそのようなフィールドで登場した隠語である。もちろん意味は「女子高生」だ。
そういった経緯のあるキーワード 「JK」 であるが、お隣中国ではただ単に「女子高校生」の意味で通っている。女子高校生と言っても中国の高級中学に通学する「高中生」ではなく、日本の女子高生を意味している。もちろん深く分析したコラムなどでは援助交際の隠語であるという点も指摘されている。ちなみに同じ文脈で男子高校生を意味する言葉は 「DK 」である。
学校制服とは別
もちろん中国の学校にも制服はある。よく知られているのはお揃いのジャージ。北京の全中学校のジャージをまとめた『制服図鑑』を完成されたネット民もいる。一方で新設、私立、実業学校でブレザースタイルの制服を導入しているところが急増中である。見た目はまさに JK 服、 DK服 とほぼ同じ。 特に日本で言うところの工業商業科、あるいは専門学校に該当する職業学校での導入が先行している。これらに関しては、わが国でもブレザー制服を導入した学校が少子化における生徒募集の課題解決の一環として導入が進んだ一方、藩校が起源のような伝統校の制服が未だに詰襟とセーラー服をかたくなに守っている点と似ている。
毎年、北京をはじめとした大都市では、こういった校服のメーカー、商社が一堂に集結する展示会が開催されている。代表的なものとしては「北京国际校服、园服展览会」。2021年の出展予定企業は560社にも上るという大規模な展示会である。今後もブレザー制服導入の流れは中国全土に広がっていくであろう。
ACGN文脈で登場
ではいったい JK のムーブメントはどこから登場してきたのであろうか。大方の見方はACGN（アニメ、漫画、ゲーム、小説）など、いわゆる「二次元」オタクカルチャー がルーツであるとの分析だ。
中国の学園生活が勉強漬けの受験地獄という状況は、わが国でも報道されているのでご存知の方は多いと思う。 一方で日本のアニメ、コミックなどで表現される学園生活は、部活、アルバイト、恋愛など中国の生徒にとっては夢のような世界、ファンタジーであろう。その世界観の中に登場する元気な女子高生のセーラー服、ブレザー&ミニスカートは青春を遊びつくす日本の学園生活を象徴するアイコンである。そうはいっても、日本の高校生も勉強などそれなりの苦労 はあるのだが。中国の高中生から見るとゆとりがありすぎに見えるのであろう。
JK 服を楽しむコア層は、生まれた時からすでにACGNに囲まれ育ったZ世代（1990年代後半～2000年生まれ）が中心である。この層が私服を着る機会の多くなる大学あるいは社会人デビューしたあたり、2010年代半ばより、都市部のストリートに現れ始める。
また、JK服と同じくアツいのが洛丽塔（ロリータ）、汉服（漢服）。同じく2次元ネタがルーツである。この3つが若いオタ系女性のストリートファッションとして注目されている。勢力図的にはロリータ＞漢服＞JK服といわれている。実際にロリータ、漢服のリアル店舗は大都市で見受けられるものの、JＫ服専門店は皆無に近い。それらはショップが運営するＳＮＳのフォロワー数に如実に表れている。また学校制服でのブレザー導入も今後のJＫ服ブームの行方を左右するであろう。
JK 服の紹介
タオバオを例にすると、上位JK服店の所在地はアパレル産業が盛んな沿岸部に集中している。上位44店舗のうち18が江蘇省、11が広東省である。 いずれもセラーは小規模なところが多い。
実際にタオバオなどで売られている JK 服を見てみよう。メインとなるのは日本の90年代前半から台頭したコギャルスタイルのもの。セーラー服あるいはブレザーであれミニスカートとコーディネートする。商品紹介画像においては怪しい日本語が踊っていたりして微笑ましい。淡いパステルトーンのJK服は以前はあまり見られなかったが、最近増殖中である。やはり、スタイリングが限られているので、素材替えや細かいディテール替えで商品の差別化を図るのが手っ取り早いようだ。タオバオでの売れ筋の価格帯は100元あたりで小遣いの少ない大学生でも十分手が届く価格帯である。 もちろん上下あわせて100元だ。
また、バリエーションとしてコギャル時代以前のスケバンスタイルをイメージした不良JK服、幼稚園のスモックをイメージした幼稚園JK服と中国ローカルの解釈がされたJK服もあり、独自進化を遂げている。これらは別項で紹介したいと思う。
参考文献：
第一财经周刊《从校服到时装，JK制服的中国进化史》
TA说《Z世代的购买力！JK制服和奥特曼，成功入选2020年度十大商品》隔夜说动漫
PEACEBIRD太平鸟官方网站
梅花网 《年轻人喜欢「JK制服」奇怪吗？》时趣