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【中国B級映画】『笔仙大战贞子』

 











日本トップモンスター貞子

鈴木光司によるミステリ・ホラー小説『リング』を起点に登場した貞子。テレビドラマ、映画と映像化もされ、いまや日本を代表するモンスターとなった。韓国やアメリカでも映画化され、日本以外の国でも知名度を得ている。ハリウッドで制作された『ザ・リング』はその後、『ザ・リング2』『ザ・リング/リバース』と続編も制作され低予算ながらそこそこ優秀な興行成績を残した。日本古来のろくろ首やのっぺらぼうを押さえ、もはや吸血鬼ドラキュラやフランケンシュタインと肩を並べるといってもいいほどだ。

 もちろん、お隣中国でも、小説は『环界』、映画は『午夜凶铃』として公開されており、現在でも定番の人気コンテ



ンツとなっている。1998年、香港で初めて映画が公開された際の興行収入は総額3,100万香港ドル。これはこの年の新春映画シャウ・シンチー『喜剧之王』を超える興行収入となるほどであった。アニメ以外の日本映画としては数少ない成功例のひとつである。




中国のコックリさん「笔仙」

 「笔仙」というのは日本でいうところの「コックリさん」のこと。わが国ではコインでコックリさんが相場であるが、中国では「笔仙」の字のごとく鉛筆、ペンなどで行われる。ほかに「碟仙」という小さな椀を利用したものもある。いずれも古代の砂占いから道教の影響を受け進化し現在の形となった。これらのキットは中国の通販サイト、タオバオでも販売されているのでぜひチェックを。また、貞子のコスプレ衣装は日本でも見かけるが、笔仙の赤いコスプレ衣装も販売中だ。なので、この映画を再現したコスプレも可能である。

 コックリさんに尋ねることも日本とほぼ同じ。自分の将来、恋愛成就、過去世といったところ。「笔仙笔仙,我是你的前世,你是我的今生,若要与我续缘,请在纸上画圈」といった呼びかけで召喚する。この映画でもそういったシーンが何度か登場するので日本のコックリさんと比較してみてほしい。

『笔仙大战贞子』あらすじ

 この映画の舞台は学園、超自然現象の講義もある少しイカれた学校だ。制服はJK服なので高校かもしれないが、おそらく偏差値は低いだろう。偏差値の低さを象徴してか、女子学生は笔仙でイケメン学級委員の意中の人を占ったりしている。イケメン学級委員の取り合いからスケバングループのイジメにあう知夏。ルームメイトと共謀しスケバンの微微に貞子のビデオ画像を送る→スケバン微微死亡。

 ところが知夏とルームメイトも貞子のビデオを見てしまい呪いがかかってしまう。ルームメイトの莉娜もトイレで憤死。学園内では10年前不審死を遂げた肖琴のタタリではないかとのうわさが流れる。知夏は笔仙で事件の真相を占うが、召喚した笔仙は不遇の死を遂げた肖琴の地縛霊であった。そして、その場に貞子も出現。日中モンスター対戦がはじまる。

 超自然現象の教授がゴーストバスターズみたいな意味不明のポンチ装置を発明し、肖琴の地縛霊と貞子対策に乗り出す。イケメン学級委員と知夏は教授のバックアップで調査を進める。そして驚愕の事実が明らかに、校長が肖琴に留学をちらつかせ迫り、断られた腹いせに強姦殺害したことが判明。真実が明らかになり自縛が解けパワーアップした肖琴笔仙、貞子を封印し成仏する。

貞子電影続々と登場

 改革開放の波で様々なコンテンツがカンブリア大爆発した1980年代後半あたりから、中国の地下コミック界では『孫悟空 VS 聖闘士星矢』『ウルトラマン VS 黒猫警長』といった中国オリジナル人気キャラと海外の人気キャラが対決するコミックが多数発売された。このあたりは筆者の知人である大江・留・丈二『韓国いんちきマンガ読本』に特集されているので参考にしていただきたい。

  元々そういった土壌があるためか、この映画のように中国オリジナルの笔仙と日本代表の貞子がバトルするという一粒で二度おいしい作品の登場は必然である。とくに近年大躍進のネットストリーミング専門の映画では、検閲基準がテレビドラマや劇場映画に比較し緩いためか、パロディを通り越したパクリ作品や低予算トンデモ作品の宝庫でもある。

  もちろんこの『笔仙大战贞子』もネット映画。上映時間も劇場公開映画と比較して少々短めである。さらに続編の『笔仙大战贞子2』、ほかに『贞子大战碟仙』『贞子归来‎』といった貞子モチーフの作品も多数公開されており、続々編『笔仙大战贞子3』もすでに撮影は完了しているとのことだ。また、貞子映画でなくとも、劇内エピソードやコントに貞子が登場するのも定期的に散見されるので、中国の映画制作者のアタマの引き出しのなかには常備されているコンテンツとなっているようだ。今後の新たなる中国貞子映画の登場に期待したい。


作品データ

タイトル : 笔仙大战贞子

ジャンル : ホラー,SF

公開 : 2016

監督 : 黄河

脚本 : 苏悦年

主演 : 思雨、孙静雯、杨青霖、黄佳军、张冰倩

時間 : 80